星組の『ロミオとジュリエット』が宝塚大劇場で千秋楽を迎えた。私もありがたいことに観劇することができた。(Aパターンをみました。)過去に、2011年の雪組、2013年の再演星組は劇場で見たはずなのだけど、あんまり覚えておらず(もう10年前と8年前だし)、すごく新鮮な気持ちで観劇できた。結果、ものすごく感動できた。全体像とは少し外れるのだけど、今日は観劇中から何か引っかかって、観劇が終わってもずっと心に引っかかっているぴーすけ氏(天華えま氏)の「死」について。
天華えまの「死」をみた最初の感想
最初に天華えまの「死」を見た感想は、「え、なにこのちんちくりん、全然かっこよくない、これはないわー」だった。(ファンの方に聞かれたらぶん殴られそうな感想である・・・・ごめんなさい・・・。)なんか印象が小さい、世界を手中に収めてる感じはしない。「怖い」とも思わない。なんか、常にニヤニヤヘナヘナして、ロミオにへばりついている。あとでWiki見て知ったのだが、天華えま氏は171cmあり、決してちんちくりんではない。でも「死」としてのあり方がとても不思議で、でも気になる、と言う印象だった。
歴代の「死」キャスト比較:基本的に「死」は「トート系の役」だと思う
ロミオとジュリエットとエリザベートはどちらも小池修一郎作品である。乱暴に言ってしまえば、ロミオとジュリエットの「死」はエリザベートの「トート」と同系列の役だとも言えるのではないか。トートは劇中で「黄泉の帝王」と呼ばれる。人間界よりも一段上にいて、全てを統べる帝王、絶対的な存在、として描かれ、歴代のトートもそのように演じられてきた。
ロミオとジュリエットの「死」は「黄泉の帝王」として描かれているわけではないけれど、ロミオとジュリエットを悲劇に追い込む存在、「愛」に対する存在として、男性的、攻撃的に演じられることが多く、そこがトートっぽいなと思っていた。歴代の「死」を演じた生徒を見ても、非常に大柄で押し出しの強いタイプのジェンヌさんだったり、トートに関連するジェンヌさんが多い。(真風の「トートをやってた水夏希に激似っていうのはこじ付けだけど・・・でもほんと似てるんだよ・・・。)
天華えまちゃんは171cmと170cm超えてはいるけど「死」役の中では一番小さく、かつ1cmしか違わなくても肩幅や背中ががっしりしていて非常にガタイがいいたまきちのようなイメージでもない。
初演星組 | 真風涼帆175cm | エリザベートではフランツだが、過去にトートを演じた水夏希によく似ている とても大きい |
雪組 | 彩風咲奈173cm | 特にトートとの関係はないけど大きい |
月組 | 珠城りょう172cm | のちに「エリザベート」でトート演じる 天華えまちゃん除くと最小だけど、ガタイがいい |
再演星組 | 麻央侑希176cm | 特にトートとの関係はないけどとても大きい |
*役変わりの真風氏は省略 | ||
2021年星組 | 天華えま171cm | |
愛月ひかる173cm | 特にトートとの関係はないけど大きい |
「トート系」ではない天華えまの「死」
ということで、これまで色々と個性の違いはあれど、「男性的」「攻撃的」そしてクールにシャープに演じられることが多かった「死」。一方で、歴代の「死」のキャストと持ち味が若干異なる天華えまちゃん。これまでの「死」の方向性を踏襲することもできただろうけど、あえてそうしなかったのかなという印象。幕間に歌劇の座談会を読んでいた時に「死は一人ひとりの後ろに必ずあるもの、生きるものの最後には必ず待っているもの」とお話されていて、「ああ!確かにそういう感じ!だからヘナヘナして、ちょっと笑いながらずっとへばりついてたんだ!」ととても合点が行った。
確かに死というのは人間にとって避けようもなくてとても恐ろしいものだけども、一方で一人一人が必ず経験するもので有り、必ずしも「大いなるもの」出なくてもいいんだ、と気づかせてもらった気がした。そして、そいういう新解釈を表現してるところがすごいなと思って、実は今めちゃくちゃ天華えまさんのことが気になってる。もう一度「死」を演じているところも見たいし、マーキューシオも見てみたい。
また、基本的にはあまり男性的ではない、どちらかというと中性的で座敷わらしっぽい「死」だったんだけど、ラストシーンで碧海さりおくんの「愛」と踊った瞬間「男役スイッチ」が入るのか、急に男性っぽくカッコよくなった気がして、その点も天華さんへの興味を加速させている。(碧海さりおくんの愛がまた折れそうに華奢でね・・・バランスがよかった。)
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